秘密の地図を描こう

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 ニコルからのメールにディアッカはため息をつく。
「だから、俺はこういう話には興味がないんだって」
 なのに、どうして彼は《アカデミーの幽霊》の話を振ってくるのだろうか。
「でも、あいつが意味もなく繰り返すはずがないよな」
 だから、何か意味があるに決まっている。
「……幽霊って言うのがな」
 その単語が持つ響きがなんか、いやなのだ。
 そんな存在を信じているわけではない。
 それでも、自分達のどこかにそれに対する忌避因子のような者がすり込まれているのかもしれない。
「不確実な存在、だからか?」
 それとも、手に触れることができないからか……と彼は続ける。
「まるで、キラみたいだな」
 生きていることは疑っていない。
 しかし、どこにいるのか、自分達にはわからない。だから、と考えたときだ。
「……まさか、な」
 いくら何でもそんな都合のいいことがあるはずがない。そうは思うのだが、どうしても引っかかってしまう。
 考えてみれば、キラの後見人だったのはあのギルバートだ。そして、ニコルの父も、まだ、最高評議会議員の一員である――しかも、ザフトに関わりの深い――その関係で彼に話が言ったとしてもおかしくはない。
 だが、とディアッカは首をかしげる。
 なら、どうして自分達にまで内緒にしているのだろうか。
 そうしなければいけない理由があるとすれば、何だろう。
「イザークにでも相談してみるか」
 話をしても無駄かもしれない。だが、話すことによって自分の考えが整理できるはずだ。
 何よりも、彼を無視してあれこれするのはまずい。
「そうしますか」
 ため息とともに立ち上がる。そして、そのままイザークを探すために行動を開始した。

 刻々と変わるデーターを見つめながら、ギルバートは眉根を寄せていた。
「さて……いつ目覚めるのかね、君は」
 できれば、彼らがこちらに戻ってくる前に目覚めてくれればいい。
 しかし、こればかりは無理を強いるわけにはいかないのだ。
「私がいるときに目覚めてくれれば一番いいのだが」
 残念なことに、暇なわけではない。やらなければいけないこともたくさんある。
 それは彼らを守るために必要なことだ。
 だから、それに関しては後悔していない。
「まぁ、キラ君がチェックしていてくれると思うがね」
 そして、自分も何かあればすぐに戻れるようにしておこう、と彼は呟く。
「後は……今回の治療で君の寿命がどれだけ延びているか、か」
 一年二年と言ったことはないはずだ。最低でも十年は延びていると思いたい。
 しかし、それを彼が感謝するかどうか。
「まぁ、君は素直でないからね。感謝をしていても素直に口にするはずがないか」
 小さな笑いとともに言葉を口にする。
「まぁ、それに関してはレイもフォローするだろうしね。大丈夫かな」
 何よりも、と彼は続けた。
「どうやら、君の力がまた必要になりそうなのだよ」
 いろいろな意味で、と言いながらまぶたが閉じられたままの彼の顔を見つめる。
「本当は、のんびりとできるのが一番いいのだがね」
 彼の言葉に返事は何も返ってこない。
 だが、それも今だけだ。
 すぐに懐かしい声が響くようになるだろう。
 その日が楽しみだ。心の中でそう呟くと同時に、笑みが口元に浮かんだ。

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最遊釈厄伝